清川だし、赤城おろし、やまじ風、広戸風。なんだか地方の特産品やお土産みたいですが、実際そのようなものです。ただし、持って帰ることはできません。これらは、局地風という地域限定の風の名前です。
局地風に共通しているのは、ごく一部を除いて全てオフショア、または山から平野に向かって吹く風であるということで、地形が大きく影響していますo 例えば日本の代表的な局地風である清川だしは、山形県の峡谷をぬって流れる最上川が庄内平野に流れ出すところで吹く風です。
峡谷から吹き出す風は、狭い所を吹き抜けてくるためにただでも強まりますが、 清川だしの場合はさらに特殊事情が加わります。最上川が庄内平野に流れ出す峡谷の奥には新庄盆地という盆地があります。日本海に低気圧、三陸沖に高気圧があると、東北地方を東から酉に横断するように風が吹きますが、風は山昇りが苦手なので、谷あいや山の低いところを抜けてこの新庄盆地に吹き集まります。
ここで一旦風のタメが効いて、いよいよ庄内平野に風が吹き出すときは、ホースの先をつまんだように勢いよく吹き出します。 このように、局地風というのは、風の方向を決める気圧配置と、風のタメを作るような地形、そして吹き出し口を作る地形という条件が重なって吹く風なのです。
風のタメを作るのは何も盆地だけとは限りません。犀風のような山脈があるとその風上側には強い風が吹き寄せ、山頂を越えた途端に地球の引力も手伝って一気に風が山を吹き下ります。これはちょうどダムのような感じだと思ってもらえばいいでしょう。六甲おろしなどはその代表的なものです。
このため局地風の多くには戒と書いておろし、海沿いの地方では船を出すのに適したオフショアの風なのでだしという名前が付けられています。他にも、夜の間に冷えて重くなった空気が盆地にたまって、コップの水が溢れるように山から吹き下りてくる風もあります。
局地風は日本だけのものではなく、外国にもシロッコミストラルなどたくさんの局地風があります。しかし局地風が吹く原理はいずれも日本のものと同じで、必ず山や渓谷などに一旦風をためてから一気に吹き出させる地形と、風上に高気圧、風下に低気圧という気圧配置がマッチしたときに吹きます。