日本のように山の多い国では、オフショアになると風が山から吹き下ろしてくる形になる所がよくあります。こういう風は結構くせ者で、海岸で強く吹いていたかと思うとインサイドでは弱く、アウトサイドではまた吹いているというように海岸からの距離によって風の強さがまちまちになることがあります。これは山を越えてくる風に特有のはね水現象というもので、風が強ければ強いほど現れやすく、しかも風の強弱がどこで現れるかもその度に違うので厄介です。
山から吹き下ろしてくる風は、基本的には地上を吹いてきて、海上に出ると摩擦抵抗が小さくなるために風が強くなるというのが普通です。しかし、あまり風が強いと、山頂を越えた風が山肌を下りてこずに、そのまま上空に飛び出して、しばらくしてから地上に下りてくることがあります。そうなると、風が下りてくる所では風は地上に勢いよくぶつかるので、ボールが弾むようにバウンドしてしまい、再び上空に向かいます。
しかし地球には引力がありますから、上空に向かった風は、またある程度上昇すると地上に下りてきます。そこでまだ勢いが残っていると、さらにもう1回バウンドし、風は波を打ちながら沖に向かって吹き続けますD 風が吹き下りてきてバウンドする所では風が強まり、上空を吹いている所では風が弱まります。さすがに何度もバウンドすると勢いがなくなってきて、やがて安定したオフショアになるのですが、小型の漁船などが操業している所までははね水現象の影響が及びmm.
この現象はなかなか見つけにくいのですが、うまくすると上空の雲を見て見つけることができます。バウンドした風が上空に向かう所は上昇気流になっているわけですから、雲ができます。風がオフショアで沖に向かって比較的平らな雲がいくつも並んでいるときは、このはね水現象が起こっていると思っていいでしょう。ちょうど雲のあるところは風が空に吹き上がっているところで、雲と雲の間は風が吹き下ろしているところです。
ただし、上に盛り上がった白い蹄のような雲が不規則に並んでいる時は要注意。こういう雲は積雲と言って、 はね水現象によってできる雲ではなく、雲の下には強い下降気流があって、 はね水現象の時とは逆に雲の下で風が強いことがあります。雲の種類を聞違えないようにしましょう。