日本では、季節が移り変わるとき、必ず雨が降ります。夏をはさんでの梅雨と秋雨は全国的に大雨や、ときには集中豪雨となるようなダイナミックな雨期ですし、冬と春の間には菜種梅雨、秋と冬の間にはさざんか梅雨などと呼ばれる小雨期が現れます。これらは、すべて停滞前線という東西に伸びた居座り型の前線によるものです。
停滞前線は、日本を取り囲むシベリア、揚子狂、小笠原、オホーツク海の4つの気団の境界線にできるものです。このため停滞前線をはさんで南北に気温や湿度が全く違う空気でできた高気圧があって、それぞれ相手に向かって風を吹き出し、前線の所でぶつかった風は逃げ場を失い上昇気流となって雲を作ります。
季節の変わり目には、前線をはさんだ2つの気団の勢力が括抗していてお互いに譲らないため、前線が同じ位置にいつまでも留まって長雨となります。 したがって、一般的に停滞前線付近の風は、前線の北では北風、南では南風、前線の真下では雨雲が発達して風は大いに乱れています。また、風のぶつかり方次第で空気が渦を巻くようになって、所々で低気圧が発生し、前線はチェーンを渡した柵のように、低気圧の所だけ北に尖ったような形になります。それだけなら単純なのですが、実は停滞前線と言っても完全にじっとしているわけではなく、西から東へ移動しています。
このため前線上を低気圧が次々と西から東へ通り過ぎ、前線に近いところではめまぐるしく風が変わります。 例えば、前線が南に垂れ下がった所では、始め北風が吹いていますが、低気圧が近づくにつれて東に振れ、その後低気圧が南を通れば再び北、そして北西-と風が変わります。
もし低気圧が北を通ると、東から南、そして北西へと風向きが急変することになります。風の強さも低気圧が近づくと強まり、遠ざかると弱まるという傾向はあるものの、前線をはさんだ高気圧の勢力によっても大きく左右されるため、一向に安定しません。
そのうえ、前線の活動が活発になると積乱雲が発達して、上空から吹き降ろす突風も加わることがあるので、いよいよ風はわかりにくくなります。 したがって、前線が停滞している間は何が起こるかわからないつもりで、行動した方がベターです。