「ボラ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。魚ではなくて風の名前です。ボラは東ヨーロッパのアドリア海東岸、と言ってもあまり馴染みがないでしょうが、アドリア海というのはイタリアの東側の海で、その対岸、クロアチアの海岸で吹くオフショアの風のことです。
アドリア海の東岸には、海岸線に沿ってデイナルアルプスという2000m級の山脈が伸びています。その奥地には広大なユーラシア大陸が広がっていて、冬になると日本に寒波をもたらすシベリア高気圧と同じような冷たい高気圧ができます。
この高気圧から吹き出してきた寒気団は、何もなければ海まですんなり流れ出すのですが、テツナルアルプスがあるために、そこで一旦せき止められてしまいます.しかし、寒気は後から後からやってくるので、チリナルアルプスの内陸側では寒気が山に押しつけられて、局地的な高気圧ができます。やがて寒気が山の高さよりも高くなると、今度は寒気が雪崩を打って海岸に吹き下りてきます。
これがボラで、もともとが非常に冷たく、しかも内陸の乾燥した空気なので、同じ山越えの強風でもフェーンとは違って、乾燥はしていても気温が高くなることはありません。ボラという言 ユーラシア大陸の反対側、日本でも同じことが起きます。冬になると、シベリアの寒気団から吹き出す冷たい風が日本列島を南北に貫く山脈に一旦せき止められて、太平洋側に勢いよく吹き出してくるのがそれで、よく冬に山から吹き下ろしてくる○○おろしという風は大体ボラと同じ現象ですし、関東平野のからっ風などはその代表格と言えるでしょう。そう考えるとボラとういうのは名前を開かないわりには、意外と身近な風なんです。
ただ、日本の場合に少し違うのは、日本海の存在です。日本に向かって吹き出してくる寒気は日本海で水蒸気を補給されます。このため、大きな目で見ればボラと同じなのですが、日本列島を吹き越える所だけを見るとフェーンの要素もあって、実際はボラとフェーンの合わさった風ということになります。 というわけでボラは日本ではあまりにありふれた風で、またフェーン現象と一緒に現れるということもあって、フェーン現象のようにわざわざボラ現象と言うことはありませんOしかし、オフショアの強風という意味ではフェーン現象と全く同じです。