温帯低気圧には、大きく分けて2つの通り道があります。1つは日本海を通るコース、そしてもう1つは太平洋を通るコースです。
日本海を通る低気圧を日本海低気圧と言います。日本海低気圧は、朝鮮半島の付け根または東シナ海の北部から日本海に入り、東北地方から北海道のどこかを横断して、太平洋またはオホーツク海に抜けるコースが一般的です。日本海を低気圧が通過すると、まず南風が吹きます。ただ風の強さは状況によって違い、低気圧が発達しながら通るか、あるいは北緯40度よりも南を通った場合は太平洋側でも南風が強まる可能性が高くなります。
2月から3月にかけて、それまでシベリア高気圧に覆われていた日本海を、その年初めて低気圧が通るようになると、全国的に強い南風が吹き荒れることがあります。これが春一番で、南風に乗って暖かい空気が次々に流れ込み、まさに春を思わせる暖かさとなります。
しかし、春一番という言葉はこの暖かさから来ているのではありません1859年2月13日、長崎県壱岐の漁師が五島列島沖に出漁したところ、おりからの強い風によって船が転覆し、53名が遭難しました。この事故以来、春先の突風を春-と呼ぶようになったのが春一番の語源といわれています。
実際、 El本海低気圧の風というのは危険な風です。というのは、始め暖かい南風が強く吹いていたかと思うと、やがて寒冷前線が通過して風向きが急変、今度は真冬並みの冷たい北風が吹き始めるからです。風の急変もさることながら、海上では南風によってできた波と、北風によってできた波が衝突して、危険な三角波が立ちやすくなり、船にとっては最悪のコンディションとなります。春一番の場合も、桜が咲く頃の暖かさになったかと思うと、その後は必ず強い北風ととも,に真冬の寒さが戻ってきます。
なお、春一番の定義は、各地方ごとに決まっていて、例えば関東地方の場合は、暦の立春から春分までの間で、日本海に低気圧があり、南風が8ワ盲以上吹いて、前日より気温が上がること、となっています。ここで問題です。春一番は立春から春分までと期間が決まっていますが、春分を過ぎてから吹いた場合は春何番になるでしょう。答えは春本番です。