日本は季節の移り変わりがはっきりしている国だと言われています。確かに、熱帯や極地方の国はもちろん、同じ緯度にある他の国と比べても、日本は夏と冬の温度差が大きく、季節によって天気も大きく変わり春夏秋冬がはっきりしています。
この差は言葉使いにも表れていて、例えばヨーロッパの夏はちょうど日本の5月頃と同じような気候なので、初冬に現れるポカポカ陽気を日本では春の陽気に例えて小春日和と言いますが、ヨーロッパではインディアンサマーとか老婦人の夏というように夏に例えられます。
日本の季節ごとの天候は、日本を取り巻く気団によって支配されています。気団というのは、温度が低い、湿度が高いというような特有の性質を持った空気の大きなかたまりで、ほとんどの場合天気図には高気圧として表れます。日本の周囲には4つの気団があって、日本付近はさながら気団のスクランブル交差点のようです。シベリア気団は乾いた冷たい空気の集団で、冬になると優勢になり、次々と寒気を送り込んできます。
反対に夏には南の小笠原気団が勢いを強め、日本は湿った暖かい空気に覆われて蒸し暑い夏となります。春や秋には中国大陸南部育ちの乾いていて暖かい揚子江気団が東に進んできてさわやかな晴れをもたらしたり、オホーツク海気団が冷たく湿った北東風を日本に送り込み、寒さや曇天が何日も競いたりします。
このように全ぐ性質の違うシベリア、小笠原、中国南部、オホーツク海の空気が入れ代わり立ち代わり日本を支配するので、日本の季節は大きく変化することになります。これは、北西は世界一大きな大陸、南東は世界一広い海に面した日本特有の立地条件によるもので、世界中探してもこれほど季節感の豊かな国はそうはないでしょう。
気団と気団の間では、性質の違う空気がぶつかり合うので、まるで境界線のように雨雲の行列ができます。したがって1つの気団が他の気団に支配権を譲るとき、つまり季節の変わり目には必ず雨が多くなります。春から夏に移るときには梅雨がありますし、夏から秋に移るときには秋霧(しゅうりん)とも呼ばれる秋の長雨があります。また、あまりなじみがないかもしれませんが、冬と春の間には菜種梅雨、秋と冬の間にはさざんか梅雨などと言って、数日間天気のぐずつく時期があります。