煙突の煙は、風がない日はまっすぐ上へ昇って行きます。冷凍庫のドアを開けると、中から白い湯気が下の方にゆっくりと落ちて行きます。閉め切った部屋で会議をしていると、煙草の煙が薄く層になって横に広がることがあります。 これらの現象は全て、空気に暖かいと軽く、冷たいと重いという性質があるからです。
煙突からは暖かい空気が出ていますから、煙を含んだ空気はまわりの空気より軽く、風に流されない限り次々と上に昇って行くことになります。また、冷凍庫の中の冷たい空気は外の空気より重いので、ドアが開くと床に向かって落ちていくことになります。
自然界でもこのような現象は四六時中起こっています。何かの理由で暖まった空気が上昇気流となって空高く昇って行き、その後に上空の冷たい空気が下降気流となって降りてくる、このような運動を対流と言い、暖かい(軽い)空気が下、冷たい(重い)空気が上になっていて対流が起きやすい状態を不安定な状態と言います。
閉め切った部屋で煙が横にたなびくのは、はじめは天井から床まで同じ温度だった室内が、だんだんと天井の方に暖かい空気が、そして床の方に冷たい空気が集まって、床から天井に向かって重い順番に空気が重なるからです。
例えば床の近くの温度が20℃、天井の近くは30℃になったとしましょう。煙草の煙が吐き出される所の温度が24℃、煙の温度はまわりの空気と混ざり合って26℃になるとします。
最初はこの煙はまわりの空気より軽いので、上に昇って行きますが、まわりの温度が蛭と同じ26℃になる所まで昇ってしまうと、そこより上の空気は煙より軽いので、それ以上上昇できなくなってしまいます。こうして上にも下にも行き場を失った煙は、横に広がるしかないわけです。このように上に暖かい空気、下に冷たい空気があって対流が起きにくい状態を安定な状態と言います。
また、空気が温度によって変わるのは重さだけではありません。空気は暖まると膨らみ、冷えると縮む性質も持っています。空気の温度は昼と夜でも、季節によってもずいぶん違いますから、実際の空気は膨らんだり縮んだり、暖まって上昇ったり、冷えて下へ降りてきたりと忙しく動き回っています。
このため地上ではほとんど休むことなく風が吹き続け、向きも強さも目まぐるしく変化しているのです。