風向きは東西南北の4方位をさらに4分の1ずつに区切った16方位、つまり北から北北東、北東、東北東、東、東南東-・というように表されます。ちなみに、この向きは風上を表しますので、南西の風と言えば南西方向から北東方向に向かって吹く風のことです。
風向き | 呼び名 |
東 | やませ、あい、あゆ、こち、いなさ、えなさ、いちせ |
西 | にし、たまかぜ、たばかぜ |
南 | みなみ、くだり、やませ(山陰)、まじ、まぜ、はえ |
北 | あなじ、あなし、あなぜ、ならい、わいだ、やませ(東北) |
ところで、北と束の間を北東と言いますが、一方で東北地方という言い方もあります。他にも都の西北とか西南の役とか、昔は東西の方が南北より前だったのが、おそらく外国の表現にならったのでしょうけれど、なぜか今では逆になっています。その上、北北東とか西南西とか、慣れないと一体どっち向きなのか瞬間的にはわからない風向もあります。
ところが昔の人、特に漁師の人達はよく考えたもので、向きが一発でわかるように、風に名前をつけていました。例えば西日本を中心に広い範囲で南風のことをはえと呼んでいました。しかも、夏の晴れとともに吹いてくる南風はしらはえまたはしろはえ、低気圧や梅雨前線に吹き込む`雨雲をともなったものをくろばえというように、風の性質まで一言で表してしまいます。
また、同じ南風でも地方によって呼び名が違い、まじと呼ぶ所もあれば、風向そのままみなみと呼ぶ所もあり、日本海側では沖に向かって吹くためでしょう、くだりという呼び方もされていたようです。同じように東風はこち、西風はそのままにし、冬の北西の季節風はあなじたまかぜたばかぜならいなど、台風の暴風はいなさひかたやまじのわき、東北地方に冷害をもたらす北東の風はやませ、同じ風が日本海側では船を出すのに好都合なあいまたはあゆなどというように、その土地その土地で風にはいろいろな名前がつけられてSESl また、風の呼び名が地名になっているところもあります。
沖縄本島の南部には東風平と書いてこちんだ、 南風原と書いてはえばるという地名の所があります。別に東風平で東風、南風原で南風が吹きやすいというわけではないようなのですが、沖縄にこのような名前が残っているところを見ても、風の名前が昔の船乗りや漁民の間に広く浸透していたことがうかがえます。このような、地方それぞれの風の言い慣わし方は全国津々浦々に何と2300種類以上もあります。